紅茶といえば、イギリスがまず思い浮かぶ方も多いと思います。
しかし、昔からフランスでも多くの方が愛飲していました。
実は、イギリスとフランスでは「紅茶を飲む目的」が違うんです。
今回はそれぞれの紅茶の文化の良さのお話です。
お砂糖たっぷりのミルクティーと、軽やかなベースのフレーバードティー
イギリスとフランスは17世紀から紅茶が飲まれていましたが、流行り方が大きく違いました。
正反対にも見えるお茶の飲み方の違いは、当時の歴史を振り返ると紐解くことができます。
イギリスは王室に様々な文化を取り入れていた
ヨーロッパで最初に飲まれていたお茶は、日本からオランダに渡った「日本茶」と言われています。
当時は優雅の飲み物というより、「東洋の万能薬」という位置付けでした。
しかし1662年のイギリスにやってきたポルトガル王女によって紅茶の嗜み方が一変します。
チャールズ2世のもとにポルトガル王女のキャサリンが嫁ぎ、改革が起きました。彼女は中国のお茶と当時は貴重だった砂糖を大量に持ってきて、貴族の間で「贅沢なお茶会」の文化が始まったのです。高級なお砂糖とミルクをたっぷり使うミルクティーが、富裕層の嗜みとして流行ったのです。
それからは英国王女たちにより、東洋の漆器や純銀のティーポットや金が装飾された美しいティーカップなど、王室に来る貴族たちへ盛大に振る舞い、やがて重要な社交の場に欠かせないものとなりました。
フランスは香りを大切にする文化が強かった
花の都とも言われるパリ。
プロヴァンス地方のバラ、ラベンダーなど、香りがいいお花がとても有名ですね。
フランス人は紅茶にもフルーツやお花の香りをつけて、紅茶を飲んでいました。
香りを邪魔しないようにミルクは入れず、紅茶自体も味があっさりとしたダージリンなどが流行りました。
毎日決まった時間に紅茶を飲むイギリスと、気軽に飲めたフランス
イギリス人は1日に7回紅茶を飲む
イギリスでは、ヴィクトリア時代から続く貴族の習慣で、1日に何回も何回も紅茶を飲みます。
朝起きてすぐや、昼食と夕食の間や、眠る前などです。
朝食時に飲む「ブレックファーストティー」は、お茶の名前でよく聞きますね。
また、16時頃に来客や特別な時に行うのが「アフタヌーンティー」と言います。
3段あるケーキ台に、きゅうりのサンドイッチや、スコーン、ケーキを乗せるのが伝統的です。
なぜきゅうりのサンドイッチ?
1700年台からヨーロッパで栽培がされるようになりましたが、イギリスの気候ではきゅうりは育ちにくく、めずらしい野菜でした。当時のお茶会の目的は自慢大会のようなところがあり、きゅうりのサンドイッチを振る舞うということも、温室を持っている裕福な家という証でした。
また、サンドイッチのパンは「白パン」というのも重要なポイントです。
庶民は、小麦不足でライ麦や雑穀などを代用した「茶色いパン」を食べていましたが、しっかりと精製してふわふわ食感の白いパンを使うことも、ステータスの一部だったのです。
女性の社交場「サロン・ド・テ」
1800年代フランスはコーヒーが主流で、カフェの多くは哲学者や政治家などが情報交換の場として利用していました。
カフェに女性は入ることも許されず、男性のみがタバコとコーヒーを嗜んでいました。
そこで、代わりに女性の社交場として、サロン・ド・テ(喫茶店)が生まれました。
上流階級の女性たちが、高級なお菓子と紅茶を楽しむ場として始まり、生活の一部としてではなく、あくまで趣向品として、次第に庶民まで広がっていきました。
アフタヌーンティーは作法を守り、フランスは自由で常軌を逸した
アフタヌーンティーでは、王族や貴族の社交場なので当然マナーが大切です。
テーブルマナーはもちろん、カップの持ち方やケーキの食べる順番なんかも決まっています。
例えば、
- 紅茶は片手で注ぐ
- ティーカップの持ち手に指を通さない
- 音を立てて飲まない
他にもたくさんあり、マナーを重んじる英国らしいですね。
一方フランスでは、特にマナーはありません。
お茶をする本人が楽しめればいいのです。
ただ、香りを大切にするために、こだわりもあります。
例えばマリアージュフレールという1854年から続くパリの老舗紅茶屋さんは、ミルクティーのミルクは冷たいものをおすすめしています。温かいミルクは紅茶自体の香りを邪魔してしまうためです。
また、今までにない創造性に溢れるお茶を作っていきます。
緑茶にベリーの香りをつけたフレーバードティーを作ったり、クリスマスをお祝いするためのお茶を作ったりと、柔軟な発想でお茶というものを革新していきました。
まとめ
2つの国の紅茶文化は大きく違いました。
- アフタヌーンティーとはイギリスの文化
- フランス紅茶は香りを楽しむもの
皆さんは、どちらの文化がお好きでしょうか。